『結晶』
 
朝目覚めたら雪が積もっていて、一面が銀世界だった。

 「綺麗」なんて言葉で感激したかったけど、ロマンチックなんて思えない。
 玄関の階段が見えないくらい、雪が積もっているから。
 子どもの時は嬉しかった雪も、今じゃ嬉しくないのは夢より現実が目の前にあるから。
 
 雪掻きを始めてまもなく、また雪が降ってくる。
 始めは小さかった白い花びらも、次第に大きくなってくる。
 何度やっても降って来る空を見上げてあたしは叫んだ。

   「もう、止んで!」

 だけど、やっぱり誰も答えてくれずに虚しく響く。

 雨が誰かの涙の形だとして…そしたら雪は何だろう?
 一人で過ごすクリスマスを悲しく思う誰かの思い?
 
 今日はクリスマス・イヴ。
 目の前を歩いて行くカップルはとても楽しそうに歩いてる。
 あたしの目の前は白い銀世界。
 空から降ってくる雪は花びらのようで、ロマンチック。
 そこを通る、カップルがまた絵になる。
 
 でも、それはあたしじゃなくて。
 大好きなあの人はあたしの目の前にいなくて。
 心の風景は彼が浮かぶけど、その姿は降り続く雪が掻き消して行く。
 同じ白なのに…。
 
 どうして?
 運んでも減らない雪。
 あたしの気持ちを無視して、降り続ける雪。
 
 あたしの目の前は白い銀世界。
 空から降ってくる雪は花びらのようで、ロマンチック。
 でも、「綺麗だね」って言える人が傍にいない。

 雪と言う結晶が積み重ねられた結果がこれならば、きっと彼も迷惑してるかも知れない。
 「好き」って言うあたしの気持ちが過剰すぎて、受け止められなくなって、どうしたらいいか迷っているだろうから。
 雪が積もって重いようにあたしの彼を想う気持ちもオモイ…。
 彼を想う気持ちが多すぎて頑張ってきたけど、計画を出しつくして身動きが取れないあたしのように。
 
 





『結晶』の続きをみる